今回は法令上の制限の分野から開発許可についてこんな悩みにお答えします
- 開発許可とはそもそも何なのか
- 開発許可の要件
- よくあるひっかけ問題
宅建の中でも法令上の制限は初学者からすると、今まで触れてきたことのない内容ばかりで挫折してしまう要素の1つです。
実際に私も法令上の制限には苦しんだ立場でした。現在は実務で開発許可を取り扱うことがあるので、初学者の方でもイメージしやすいように解説します。
開発許可とはそもそも何なのか
結論から言うと「建築物の建築・特定工作物の建設のために土地の区画形質を変更すること」です。
初学者の方がよく間違えるのですが開発許可=建物の建築ではありませんので注意してください。
さて、「特定工作物」と「土地の区画形質の変更」のワードが出てきました。
初学者の方にはピンとこないと思いますので丁寧に解説します。
特定工作物とは
特定工作物は前提として「第1種特定工作物」と「第2種特定工作物」分類されます。
第1種特定工作物とはコンクリートプラント(コンクリートを製造する設備)のこと。
上記写真のような施設です。
第2種特定工作物とはゴルフコース・1ha(10000m2)以上の野球場、遊園地、レジャー施設、動物園、墓園が該当します。
ここでポイントなのは、ゴルフコースだけは面積の規模に関わらず2種特定工作物に該当するということです。
土地の区画形質の変更とは
結論から言うと土地の区画形質の変更とは土地の「質」の変更と「盛土・切土」の2つを指します。
土地の質の変更とは宅地以外の土地(農地など)から宅地へ地目変更することをいいます。
市街化調整区域のような農地が多いエリアでは必ず開発許可が必要になります。
盛土・切土とは住宅などを建設するための造成工事のことで、建物と道路との高低差を調整する目的などで行われる工事のことを指します。
盛土・切土は宅地造成等規制法で関わってくる部分なのでイメージだけできれば十分です。
開発許可の要件
ここは試験でよく問われる内容のため、必ず覚えましょう。ただ覚えるのではなく、イメージがつきやすいような覚え方を解説していきます。
開発許可の要件では下記の5つのグループに分類されます。
〜都市計画区域内〜
都市として市街地の整備や開発、保全をする必要がある区域のことで住み良い街をつくるのが目的。
原則、都道府県が指定を行いますが、複数の都道府県にまたがるような境界部分は国土交通大臣が指定します。
- 市街化区域→住宅街。街と聞いてイメージできる場所の大体が該当する。
- 市街化調整区域→農地や田舎を守るための区域で原則的に建築ができないエリア。
- 非線引き区域→市街化区域・市街化調整区域のどちらにも属さないエリア。都市計画区域内に属しているため、計画的な街づくりを行う予定だけど一旦保留にしている区域。
〜都市計画区域外〜
下記の準都市計画区域と都市計画区域外が該当します。特に初学者の方は準都市計画区域が都市計画区域内と勘違いしてしまいがちなので注意しましょう。
4.準都市計画区域→将来的に市街化が見込まれるエリアで無秩序な開発行為を防止するために土地利用を規制している区域。
5.都市計画区域外→インフラが整っていないようなエリア。山間部や森林・海岸など。
それぞれの開発許可が必要な場合をイメージしやすいように解説していきます。
市街化区域
市街化区域では1000㎡未満の規模の開発行為を行う場合に開発許可が不要です。
市街化調整区域に次いで厳しい要件となっております。
市街化区域のような街中に1000㎡以上の大規模な施設が突然できた場合を考えてみると、交通量の増加や騒音など近隣に在住されている生活に大きな影響を及ぼす可能性があるからと覚えてみるのがオススメです。
1000㎡は坪数換算で約302坪です。平均的な家の坪数が30坪前後なので、一般住宅10軒分の大きさとなります。
また、三大都市圏さらに厳しく500㎡超でも開発許可が必要になり、知事や市長は条例によって開発行為対象面積が最小で300㎡超のラインまで許可を取得するように制限をかけられます。
市街化調整区域
市街化調整区域では規模を問わず、必ず開発許可を取得する必要があります。
なぜなら農地や森林などの緑を守るために市街化を抑制する区域だからです。市街化調整区域の目的が分かっていれば難しい話ではありません。
ただ、「市街化調整区域」には一定の場合は許可が不要で開発行為を行うことができます。
①農林漁業用の建築物を建築するために行う開発行為
→具体的には畜舎(牛小屋)、温室ビニールハウス、サイロ、農機具収納施設が挙げられます。
②農林漁業を営む者の居住用建築物を建築するために行う開発行為
→市街化調整区域の目的である農地を守るという方針に基づいて、農家さんが減らないようにするための特例だと考えると分かりやすい。
上記の例外を用いた問題で「市街化区域」とひっかけて初学者を紛らわす出題パターンがありますが、そんな時は冷静に考えてみましょう。
街中に農業系の建物が建築されたら臭気や騒音の影響があって困りますし、市街化を促進したい区域で農業の特例を設けるのは矛盾していると分かりますね。
非線引き区域・準都市計画区域
非線引き区域は市街化区域・市街化調整区域のどちらにも該当しないエリアのことを指します。何色にも染まってないという意味合いから白地地域とも呼びます。
都市計画区域内のため、将来的に街づくりを進めていく方針ですが、とりあえず保留にしておくエリアになります。
ガンガン街づくりをしている区域ではないため、周囲に影響を及ぼす可能性が少ないことから市街化区域の要件よりもゆるい3000㎡未満では許可が不要です。
また、準都市計画区域ですが非線引きと同様の3000㎡未満では許可が不要となります。
都市計画区域外
都市計画区域外は都市部から離れた山間部や森林、海岸沿いなどの人が住みつかないようなエリアが該当します。
そのため、乱開発される可能性が低いことから基準が最も緩い1ha未満までは許可が不要となります。
1ha=10000㎡です。
ひっかけ問題の対策
私の経験を踏まえて、開発許可からひっかかりやすい問題を複数ピックアップします。
Q1.市街化調整区域において、医療法に規定する病院の建築を目的とした1000㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなくてよい。
A. ×
〜解説〜
①病院の目的とした土地の区画形質の変更は開発行為にあたります。また、市街化調整区域のため、規模を問わず開発許可が必要です。
②医療法というワードで混乱しますが、病院は公益目的による例外に該当しないため、×となります。
教育法などの〇〇法に騙されないように。
公益上必要な建物として該当するのは学校、公民館、図書館、派出所、郵便局、博物館、鉄道、公衆便所、公衆電話等があります。
開発許可の類の問題は①まず開発行為に該当するのか→②許可不要の要件に該当するのか の2段階形式で考えると解きやすいよ
Q2.市街化区域内において、農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築をする目的で1000㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者はあらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
A. ◯
〜解説〜
①建築物の建築を行うために土地の区画形質の変更を行うため、開発行為に該当する。
②市街化区域(街中)で農業を営む人が居住用の目的で開発行為をする場合は許可不要の要件には該当しないため、開発許可を受けなければならない。
なお、問題文が市街化調整区域の場合は、農地を守るという方針が合致しているため、許可は不要となります。
初学者の方は市街化区域と市街化調整区域の目的・イメージをしてみましょう。
市街化では街づくりを促進したい場所。
市街化調整区域は畑を守りたいから、農業を営む人を支援するイメージで許可不要の優遇措置があるんだなみたいにふわっと思い出せると良いでしょう。
開発許可の未満というワードにも注意しよう。1000㎡未満に1000㎡は含まれないよ。
Q3.二以上の都府県にまたがる開発行為は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
A. ×
〜解説〜
①開発許可の許可権者は知事なので誤り。大きな市では市長となります。
都市計画区域が二以上またがる場合の決定権者とのひっかけなので注意してください。
「開発許可を取得するために国土交通大臣のような忙しい方の許可を取得するって考えにくいよな〜」とイメージしてみると覚えやすいね
まとめ
法令上の制限の開発許可はイメージしずらい上に頻出傾向にあります。
各区域の特徴や目的を頭の中でイメージすることで例外特例を用いた紛らわしい問題の得点率アップにつながります。
また、公益上必要な建物の扱いに該当するものは可能な限り覚えるといいでしょう。私が受験した時は博物館の問題が出ました。テキストには載ってないため、困惑した受験生が多かった印象です。
①まず開発行為に該当するのか→②許可不要の要件に該当するのか の手順を意識して問題を解いてみるとスッキリ解けるので頑張ってください。
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