日常生活で無意識に利用している道路ですが、実は見かけによらずたくさんの種類の道路があり、場合によっては建築ができなったり、思わぬコスト負担につながることも。
そこで今回は現役宅建士の私が土地選びの際にこのようなトラブルを未然に防ぐために最低限チェックするべき項目を解説します。
このページを読むだけで土地選びの際の参考になると思いますので、最後まで読んでみてください。
道路のチェック項目10選
結論から言いますと下記のつが最低限チェックするべき項目です。
- 公道か私道か
- 道路の種類
- セットバックの有無
- 舗装状況
- 側溝や縁石の有無
- 接道道路の方位
- 接道義務を満たしているか
- 私道にかかる制限
- 道路の特性
- 接面状況
公道か私道か
前面道路が「公道」か「私道」は見た目だけでは判断がつかないため、公図で確認しましょう。
公図は法務局に行けば、誰でも取得できます。
判断方法は道路部分に「地番があるかないか」だけです。通常は道路部分は「道」となっているため、簡単に判断ができるでしょう。
公道と私道の特徴は下記の通りです。
〜公道〜
- 管理者:国や地方公共団体。道路の維持管理費は税金から賄われる
- 通行:すべての人が共有して自由に通行できる
- 道路の舗装や水道管の工事の際の掘削:国や地方公共団体に対して掘削許可が必要
〜私道〜
- 管理者:所有者が管理する。所有者が道路の維持管理費を負担する
- 通行:原則、道路の所有者や所有者の許可を受けた人が通行可能。例外として私道であっても、建築基準法による指定があるものは誰でも通行することができる場合がある。
- 掘削:土地所有者の掘削許可が必要。
私道の場合のチェックポイント
もし、接道している道路がある場合は必ずチェックするべきポイントがあります。
- 私道の持ち分があるか
- 持ち分がある場合は共有型か分筆型か
- 分筆型の場合は通行掘削承諾があるかどうか
- 土地の一部が私道部分に含まれていないか
- 私道の廃止の制限
私道の持ち分について
私道の持ち分がない場合は、通行や道路を掘削する際に承諾が必要となります。
トラブルのケースとして、通行料を請求されたり、掘削の場合ではガス工事や水道工事ができないため、建築の影響を及ぼす可能性が挙げられます。
対策としては、通行掘削承諾書があるかの確認、承諾書には「第三者に対しても権利を承継する」旨の文があるかを確認しましょう。
権利者とどれだけ仲が良くても急な相続やトラブルで揉めることも少なくないので、必ず承諾書の有無を確認しよう
共有型か分筆型か
〜共有型〜
・私道全体を土地所有者全員でお互いに共有するタイプ。私道全体を自由に通行可能。
〜分筆型〜
・私道を各所有者で単独所有するタイプ。他人が所有する私道を通行することになるため、トラブルの原因になりやすい。
分筆型の場合、立地によっては他人の所有地を通ることになるため、私道の持ち分が場合と同様で通行掘削承諾があるか必ず確認しましょう。
公図を取得して私道部分が分筆されていれば、分筆型と判断できるよ。トラブルに発展しやすいことから共有型が主流だよ
私道負担はないか
私道負担とは所有地の一部に道路が含まれていることや私道の所有権や持ち分を持たずに利用するための負担金のことを指します。
また、所有地の一部が私道になっている場合は道路管理費や固定資産税などの負担がある場合があり、購入する立場からすると不利益が生じることがあるため注意が必要です。
不動産広告では私道負担について記載する義務があるため、所有権や持ち分の有無について確認してみましょう。
公共性が高い私道の場合は、公衆用道路として認定されることで固定資産税が非課税になることがあるから確認してみよう
私道にかかる制限
チェック項目は下記の通りです。
- 持ち分があるのか
- 通行掘削承諾はあるのか
- 私道のメンテナンス、維持管理費用の負担はどうなっているか
トラブルになってしまうと、建築が進まなくなったり、思わぬコストの負担になる可能性があります。
持ち分がない場合には、必ず通行掘削承諾書があるか確認しましょう。
私道の廃止の制限
結論から言うと私道の廃止の制限があった方がいいものです。
私道の廃止の制限とは、対象地に接する道路が私道の廃止によって接道義務等を満たさなくなってしまう場合を保護するために特定行政庁が私道の変更・廃止の禁止や制限をすることをいいます。
私道は所有者が変更や処分ができますが、この制限がないと接道義務を満たせず、所有者が建物の建築ができない・地価の大幅低減等の大きな不利益を被ってしまいます。
私道である場合には必ず確認しましょう。
セットバックの有無
セットバックとは接している道路が42条2項道路である場合に、自分の土地を削って道路を拡幅することを指します。
42条2項道路とは建築基準法施行日以前から存在していた幅員4m未満の道路で特定行政庁が指定したものをいいます。(みなし道路ともいいます)
セットバックをする必要があるかの確認方法は、市役所の建築指導課で調べることができます。
幅員4m未満の道路に接している土地は原則として建物の建築はできませんが、救済措置として既存建物がある場合は土地の一部を削って道路を拡幅することで再建築が可能となります。
セットバック部分には門や塀の設置はできないよ。また、建ぺい率や容積率の算定に含むことができない点にも注意しよう。
舗装状況
舗装状況については大きく3種類に分類されます。
- 簡易舗装
- 完全舗装
- 未舗装
順番に解説していきます。
簡易舗装
簡易舗装はアスファルトやコンクリートなどの舗装材料を使用せず、砂や砂利などの素材を使って道路や敷地を舗装する方法のことです。
アスファルト・コンクリート舗装と比べて耐久性が低いため、長期的な利用が不向きです。
特に私道の場合は、簡易舗装である場合があります。
道路のメンテナンスは所有者=管理者となるため注意しましょう。
完全舗装
完全舗装はアスファルト・コンクリート・ブロックなどの耐久性の高い舗装材料を使用して道路や駐車場、歩道などを舗装する方法のことです。
こちらも私道である場合は、所有者負担による定期的なメンテナンスが必要となりますが、市への道路採納がされていれば、市が道路の管理を行ってくれるため、確認しましょう。
未舗装
未舗装とは舗装材料が道路や敷地に使用されず、土・砂・草地などでそのままの状態であることを指します。
分譲地の土地では家が全棟建ってから道路を完全舗装する場合もあるため、現状が未舗装の場合は不動産会社へ聞いてみましょう。
側溝の有無
側溝は排水設備の一種で、雨水や汚水を排水するための水路です。本下水による排水が一般的ですが、側溝がないような場所だと放流先がないため、汲み取り槽による排水方法になってしまいます。
汲み取り槽の場合は定期的な清掃や汲み取りが必要となり、ランニングコストがかかってしまう点や臭気に影響を及ぼす可能性があるため、必ず確認しましょう。
縁石の有無
縁石は意外と見落としがちな点で、検討している土地に縁石が被っていて車の出入りに十分必要なスペースが確保されていないケースがあります。
また撤去する際は、地域の建築法規や交通ルールに則って進める必要があり、時間やコストを要する場合があります。
購入してから撤去できないことに気づいたということにならないように、必ずチェックしましょう。
接道道路の方位
接道道路の方位はお住まいの地域やライフスタイルによって考えていくと良いでしょう。
それぞれの特徴を解説します。
〜北側道路〜
メリット
- 夏季の日射が比較的少ない傾向にあるため、室内の温度への影響が軽減される。
- 過度な日射を受けないため、日射によって製品が劣化しずらい。
- 南側に庭やリビングを持ってくることで人目を気にせず、日光を最大限に活かしながら生活できる
デメリット
- 一般的に南側に庭やリビングをゾーニングすることが多いため、景観・眺望が制限されやすい
- 太陽光を導入する場合は発電効率に影響を及ぼす可能性がある
- 冬季は太陽光による自然的な暖房を受けにくいため、暖房効率が低下する可能性がある
〜南側道路〜
メリット
- 陽当たりが良いため、日中は照明なしで電気代の節約につながる。冬季は暖房費の削減にもなる
- 太陽光発電を導入する場合は最大限の恩恵を受けられるため、電気代の削減につながりやすい
- 南側は植栽に適しているため、景観や眺望を楽しめる
デメリット
- 陽当たりが良いため、室内に熱が篭りやすい
- 日射によって外部設備やウッドデッキ等のエクステリアの劣化が早まる可能性がある
- 人通りがある道路では、日当たりを最大限に活かしきれない場合がある
〜東側道路〜
メリット
- 朝日を浴びられるため、快適な朝を迎えられる
- 南側道路と比較すると安価なコストで購入しやすい
- 南側にリビングがある場合はプライバシーが確保されやすい
デメリット
- 午後は日照が不足し、照明をつけないと暗く感じたり、太陽光の発電効率が低下する可能性がある
- 南側道路と比較すると電気代のコストがかかりやすい
- 南側に建物がある場合は陽当たりが悪くなる可能性がある
〜西側道路〜
メリット
- 隣家と適切な距離が確保されている場合、南側一面に陽当たりの良い大きなLDKを確保しやすい
- LDKへの目線が気になりづらい(LDKを南側に配置すること場合で隣家目線で考えると北側であり、水廻り関係が固まるため)
- 西陽により、夕方まで室内が明るく照明をつけなくても過ごせる
デメリット
- 西側に大きい窓を設置すると西陽によって暑さや眩しさを感じてしまう
- 南側にある隣家と適切な距離が確保できていない場合、陽当たりが悪くなってしまう
接道義務を満たしているか
接道義務とは建築基準法上の規定で道路に2m以上接していなければならないという決まりのことです。
接道義務を満たしていない場合は原則として、建物の建築ができません。
これは救急車や消防車などの緊急車両の通行の確保や災害時の避難経路を確保するための目的があります。
例外として接道が2m以上接していなくても、特定行政庁が安全等を考慮して支障がないと許可した際は建築が認められる場合もあるため、必ず確認しましょう。
これを43条但し書き道路と呼びます。
道路の特性
接している道路が通り抜け道路か行き止まり道路か一方通行か等の道路の特性をチェックしましょう。
また、道路によっては標識・カーブミラーが設置されており、工事の妨げになる場合も。
撤去や移動する際には費用がかかるのはもちろん、警察署と協議していく必要があります。
撤去や移動によって交通に支障をきたすようであれば、最悪の場合、工事がストップしてしまう場合も考えられるため、注意が必要です。
接面状況
対象地が道路と直接接している場合は良いのですが、間に水路がある場合は注意が必要です。
土地と道路の間に水路がある場合は建築基準法上の接道要件を満たさない場合があります。
水路は水路上を日常的に通行で利用するために、開渠や暗渠が施工されております。暗渠の場合は見た目でわかりずらく、幅員4m以上ある場合でも水路の部分は幅員に含まれていないケースがあるため、公図で「水」の記載がないか確認しましょう。
ただし、一定の要件を満たすことで建築基準法上の道路幅員に含めることができます。
水路によって接道義務を満たさない場合にカルバート(出入りをするための橋)を設けることで接道義務を満たせることがあります。その際は水路専用許可や設置に高額なコストがかかるため、予算に組み込んで計算する必要があるでしょう。
また周囲に水路がある場合は軟弱地盤である可能性もあるため、購入を検討する場合は慎重に。
水路は厄介な部分が多いから、不動産業者に必ず確認しよう
まとめ
いかがでしたでしょうか。
道路は見かけによらず様々な種類、特性があり想像以上に複雑なものです。
特に私道である場合は権利関係によって大きなトラブルに発展してしまう可能性があるため、デメリットになる部分を不動産業者に確認すると良いでしょう。
土地探しの参考になれば幸いです。
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